GRENAGE DIALS
ウルバン ヤーゲンセン
グレナージュダイヤル
一見すると何の変哲も無いホワイトダイアル。しかし、その表面は光の当たる角度によって様々な表情を見せます。これがグレナージュと呼ばれる伝統的な技法で作られたウルバンヤーゲンセン独自のダイヤルです。
グレナージュダイヤルは1800年代後半に始まりました。これは、最近ではほとんど使用されていない文字盤作成の技術です。他に類を見ない表面の質感を持ったこのグレナージュダイヤルが、今ではなぜ作られなくなってしまったのかは簡単に理解できます。
気の遠くなるような手間暇が必要とされるだけで無く、そもそもこのグレナージュ仕上げと呼ばれる技法に必要なレシピを扱える職人のスキルが失われてしまっているからです。塩と銀、特殊な溶剤を用いたこの仕上げ法には、揺るぎない忍耐力、集中力の絶妙なバランスが整わない限り、高級時計の文字盤として成り立つだけの質感には仕上がりません。
しかし、ウルバンヤーゲンセンはこの技法には、手を掛けるだけの唯一無二の価値があると信じています。
文字盤はひとつひとつ、独自の手仕事によるプロセスによって完成されます。文字盤は時計の存在感の80%を占めるといわれており、ウルバンヤーゲンセンのように伝統にこそ重きを置く時計メゾンにとっては、この複雑なアプローチを用いることはその歴史を鑑みた上でも多いに意味があることであり、今のこの現代にこそ入手可能な時計として存在させるに値すると考えています。
各文字盤は、数字とマーキングの微細なエングレービングが施された無垢のファインシルバーのプレートで始まります。それぞれのエングレービングには手作業で黒色ラッカーを充填し、硬化後、ダイヤモンド紙でゆっくりと研磨してエングレービングを行った溝にラッカー残留物を残します。
一見すると単なる印字のようにも見えるこの文字一つ一つが、実は微細な彫り込みによって象られた「象嵌仕上げ」によって成り立っているのです。
これらの技法は、まだ現代のようにラッカー印刷の耐久性が無かった時代に、印刷した文字では長い年月を経るうちに文字が剥がれ落ちてしまうといった問題を解決するための技法でもありました。
次に、銀、塩、その他の成分による特別かつ秘密の混合溶剤を用いて、個々の文字盤に手作業でゆっくりとブラシをかけるにつれて、グレナージュの層が段階的に構築されます。
その後、電気化学反応により、表面は美しい真珠色の仕上げに、そして独特の深さと粒状性を備えた銀色の表面が特徴的なグレナージュダイヤルが完成するのです。
このグレナージュダイヤルの表面はそれぞれ1枚1枚が、異なった独自の表情を持っており、1枚として同じダイヤルは存在しておりません。
そのような意味合いにおいては、それぞれが目に見えて判別可能なユニークピースであるとも言えるのです。